-失敗が前提のイノベーションをどうやって起こすか-

早稲田ビジネススクール・入山章栄先生×One JAPAN 対談 後編

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☑️ 本物のビジョンとは

☑️ 若手が選ぶ変態ミドル

☑️ 自分は結局何をやりたいのか

☑️ One JAPANこそ、失敗できる場に

「拝むためのビジョンでなく、体に染みつく本物のビジョン

大川:前編では、人が動いてつながることで暗黙知(インフォーマルな情報)が動くことがいかに重要かを教えていただきました。また不確実性が高まるこれからは、正確性よりも「納得性」を高める「センスメイキング」が肝となり、そのための「ビジョン」が必要だというお話でした。

私のいる富士ゼロックスは、会社のビジョンに共感して入ったという人が大半です。パナソニックとかもそうですが、日本の会社はとてもビジョンを大切にしてきたかと思うのですが。

入山先生:そうですね。ただ日本の会社は、ビジョンが神棚に上がってしまうような傾向がある。欧米の企業や、日本でもベンチャーや同族経営なんかのは、みんな「ガチ」なんです。全員が本当に体で納得しているビジョンであることが多い

その会社らしさっていうのも、答える人によりバラバラだったりしない。創業者の理念をベースにして、「うちの会社はどういう風にどういう価値を出して社会に貢献していくんだ」っていうことに関してだけは、絶対に社員の足並みをそろえる必要があるんです。

そのためにはひたすらトップが語るしかない。今、いい会社ほどトップの仕事はビジョンを「語る」ことになっている。それがセンスメイキングですね。ユニリーバなんか、CEOのポール・ポールマンは、来日すると会社のビジョンのことしかほとんど話さないくらいだそうです。

濱松:前編では、大企業の変革は結局トップであり、トップを巻き込むことが重要だと教えていただきました。僕らもいつも言っています。会社を辞めないんだったら、圧倒的当事者意識を持って、個人で突破するか、上とつながってチーム力で変革していくかしかないということ。

若手が選ぶ変態ミドル

入山先生:そういった意味では、One JAPANがひとつのソリューションになるかもしれないですよね。あと、人間って基本的に年を取ると頭固くなるんですけど、とはいえ40代以降でも中にはけっこう突き抜けた変人はいるんですよ

One JAPANを通じて小さな成功体験をいっぱいつくって、外で得た視点とかを持って、そういうオヤジたちを少しずつ巻き込んでいくのはどうですか?いるじゃないですか、会社の中にそういう人。

大川:そういう人たちは、人とつるむのとか嫌いだったりしますね。たぶん、つるめなくて一人でやって成功した体験を持っている人たちなんですよ。うちにもそういうタイプのすごい人がいるんですけど、唯我独尊な雰囲気を醸し出している。

でも、諦めずにこちらからいろいろやり取りしていったら、かなり理解してくれるように変わります。意外に柔軟性も持ち合わせている。本来はおそらく一緒にやりたかったけど、仲間がいなくて一人になるしかなかったのかなって。すごい尖ってますので。たしかに、だからこそ、僕らが一緒にやっていけばいいんじゃないかって思います。

入山先生:すごくいいと思います。「変態おやじ募集!」みたいに告知して。マジで。結構来ると思いますよ!

濱松:先日、元AERAの浜田さんと話す機会があって、ちょうどそんな話をしていました。浜田さんには、12月の交流会にも参加いただいたのですが、「One JAPANの熱量はいいものなんだから、トップとミドルの人たちと連携してやるしかないよ」と。いろんなところから尖ったミドルを集めて、一回何かやりませんかっていうことは話してます。

大川:「若手が選ぶ変態ミドル」っていう特集を組めば。

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濱松:そうそう。浜田さんが言ってくれたのは、僕らがどういうおじさん・おばさんたちを好きかっていう視点のいわば「若手が選ぶ理想の先輩」。その人たちが斜めのメンターになってくれたら最高だと思うんです

富士ゼロックスのそういう人が、NTTやパナソニックと一緒に何かやるとか、アドバイスをくれるとか。ちょっと縦では言いにくいこととか、そういうのも斜めだったら話しやすいんじゃないかなんて話をしていて。

そして10年、20年経ったら僕らがミドルになる。それまでずっと上とも下とも連携し続けていくしかないんだろうなと。そう思っているんですが、やっぱり起業家の方たちとそういう話をしていると、「そんなの待たずに辞めたほうがいいよ」なんてよく言われてしまう。

結局、自分は誰で何をしたいのか

入山先生:それは面白いポイントで。さっき会社のビジョンの話をしたじゃないですか。会社のビジョンが大事になってくると、個人のビジョンがさらに重要になるんですね。

これからは、人と人がもっと動いてつながる時代になるので、そうなると「結局自分はどういう人間で、何したいんだ」というところがコアになる。僕はよくそれを「ビジョンとビジョンのマッチング」って言ってるんですけど。世の中は絶対、すべてがビジョンベースになっていくんです。

ベンチャーはすでにそうなっている。給料云々よりも、トップの考えに共鳴して、やりたいことをやるために集まってくる。
一方で大企業は今まで、いい大学入って、名前のある会社に入るという価値観だった。皆さんがそうだとは言わないけど、就職人気ランキング何位の会社に入るとか、親が安心するとか、合コンでモテるとか、そういう基準が少なからずあった。面接では建前上、「御社の考えに共感しまして」とか言っても、どこか本音でなかったり。

会社側も、勝手に解釈したビジョンを植え付ける。そうやって個人のビジョンを無視して会社色に染めることは、さっき話した本物のビジョンを浸透させるということとは違うんです。キャッチアップ型の社会のときには、大企業はそのやり方で成功してきたから、そこから抜けきれてないのだけど。

少なくとも我々の方は「自分が何したいか」っていうのをはっきり持つということがとても重要。自分がどういう人間で、どういうところに喜びや幸せを見出して生きていこうと思っているのか。さっきの濱松君の話とかも、ビジョンがはっきりしていたら、スパッと答えって出ると思うんです。大企業に入るかベンチャーにいるかっていうのはあくまで手段だから、自分のビジョンに合っている手段を選ぶだけ。

残念ながら、日本はあまり個人のビジョンを持つための教育をしていないんですよね。小学校の頃は将来の夢って書かせるじゃないですか。でも中学から急に書かせなくなる。中高で夢とか語ってると「バカじゃないの」みたいな空気になる。で、偏差値の高い大学に入って、名前がある会社に行くっていう風に生きているので、なかなかその辺の感覚が弱くて。でもこれからすごく変わってくると思います。僕の世代より皆さんの方がはるかにそういうのあると思うし。

大川:個人のビジョンをつくるっていうのはありだなぁ。

濱松:やっぱり最後は個に落ちる。

「あの人は何がしたい」を分かり合う

入山先生:うん。自分が結局何をやりたいのか。例えばOne JAPANであれば、濱松君のビジョンに共鳴して集まってくるわけじゃないですか。人と人をつなぐことで動いていって、「大企業はそれができていないからやりたい」っていうビジョンがあって。共鳴する人があれだけいるわけですよね。ビジョンが揃っているわけですよ。

そういう人をもっと増やしていけばいい。そういう共通のビジョンがあって、だけどまた一人ひとり各々の思いがあって来ているわけで。「あの人はああいう思いで来てるんだな」みたいなのがわかると面白いですよね。

大川:「あの人は何ができる」よりも、「あの人は何がしたい」っていうことですね。

入山先生「何をしたい」っていう方が大事ですから。例えばwantedlyはそれをやってるわけで、ベンチャーでは普通に起きてること。大企業だとそもそもビジョンを語るのがあれみたいな・・。

大川:ちょっとカッコ悪いとかダサいとかいうのがあるよね。会社の3年・5年時研修で何をしたいかとか書かされるんだけど、共有してもふぅーんで終わっちゃう。それを、こういう熱いところで伝えると、それいいねって次につながる。

濱松:それこそ一緒にやろうとか、誰か紹介するよとかって、次の動きが生まれますよね。

失敗が嫌いな日本企業

山本:入山先生が今後One JAPANに期待することがあったら、教えてください。

入山先生:これすごい言いたかったことなんですけど。僕はOne JAPANのこれからをすごい楽しみにしていて。なぜかというと、人と人が動いてつながることにより、経営学的にいう「知の探索」ができるわけですね。これは大企業に圧倒的に足りなかったことです。で、知の探索って失敗するんですよ。失敗が前提なんです。

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例えばスティーブ・ジョブズって、今だとiPhoneとかが馬鹿みたいに当たって、奇跡みたいな人と思われてるけど、出している製品ほとんど失敗しているんです。でもそれは非常に正しいことで。

知の探索っていうのは失敗が前提なんですね。知と知を組み合わせて、新しいものを生み出すわけですから。いろいろ試すわけだから、多くは失敗するわけです。別に最終製品をいっぱい出せと言っているわけではなく、その前のレベルで失敗案みたいなのがいっぱい出てくるべきなんですよ。

でも日本企業の厄介なのは、失敗が嫌いなんですよね。これは矛盾していて。最初から成功するとわかるイノベーションなんてこの世にあるわけがない。客観的に見て成功するか失敗するかなんて、わかるわけがないんです。そうするとやっぱりいろんな組み合わせをトライしていくしかないんだけど、それを阻むのが、日本企業に特に強く残る、減点式の「評価」というものです。

評価のあり方も変わっていく

これは非常に重要なポイントで、今日絶対伝えなきゃと思っていたのですが。「評価」が敵なんです。それが入った瞬間に人間はもう本質的に失敗を恐れるので、知の探索をしなくなるんです。日本でも伸びているベンチャーの多くは、そこをとても工夫しているんですよ。

例えばストライプインターナショナルはKPIから「成功 / 失敗」っていうのをなくしたと聞きました。その代わり何で評価しているかというと、「何回トライしたか」。サイバーエージェントは「失敗の自慢大会」を会社で推奨していますしね。ベンチャーだからできるんでしょって思われるけど、GEなどの大手グローバルカンパニーも「成功 / 失敗」っていう紋切り型の評価基準を外す方向に流れてきているようです。

一番「成功 / 失敗」の呪縛から抜け切れていないのは、日本の大企業なんです。だから僕は、One JAPANは「失敗ができる場所」にしてほしいと思っています。しつこいけど、知の探索はいっぱい失敗した上で最終的に幾つかキラリと光るものが出てくるものなので。

みなさんは大企業という「普段失敗できない場所」にいるわけです。だから、One JAPANこそ「失敗できる場所」にしないといけない。これはすごい重要です。失敗をたくさんできて、知の探索ができて、そこからいろんな人たちがファーストペンギンになってポンポンいろんなところに飛び込んでいく。

濱松:やっぱり打席にどんどん立ってもらわないといけないですね。

入山先生:だってOne JAPANに何しに来たかっていうと、挑戦しに来たわけでしょう。失敗した時にも、気持ち的には落ち込むけど、こういう学びがあったよねって。人間、失敗と成功だったら圧倒的に失敗からの方が学べるっていうことはもうわかっているので。

大川:熱量があるから、一回失敗してもまた再起できるからね。

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ビジョンがあれば、立ち直れる

入山先生:そうそう。そういう時に一番重要なのはやっぱりビジョンなんですよ。ビジョンがあると、それをやりたくってやっているわけだから、じゃあ別の方法を試そうって起きあがれる。一回失敗して立ち直れなくなるのは、やりたくないことをやらされているからなんですよ。

濱松:確かにここで失敗しても、仲間もいるし、ここで成長できたなって。もう一回違うやり方で頑張ろうっていう方向になりますよね。

入山先生:ちなみに、日本で一番社員に愛されているビジョナリーなトップの一人はロート製薬の山田会長だと僕は思います。社員に「くにおさん」って下の名前で呼ばれ、超愛されている。石垣島に豚買ったり、短期的に見たら一見理解しにくいことやってるんですが、一方で企業は長いビジョンを持つことが大事なんです。2−3年のビジョンしか見ないと、いわゆる進化型のものしか評価ができないので。

ロート製薬は東北の震災があったときにはすぐに役員の給料を10%返上して、現地に重要な人も送り込んだ。長期ビジョンを持っているので、この社会から良くしないとと本気で思えるんです。山田さんのとこもボコボコ失敗してるんですよ。でもそれがやっぱり知の探索になってるんです。その中で「肌ラボ」みたいな大ヒットが出てくるんです。

One JAPANもKPIはやっぱり「トライの数」じゃないかな。ボコボコできるようにする仕掛けを作ってあげるのがOne JAPANがやるべきこと。そのためには何が大事かっていうと、やっぱりビジョンだと思うんですよね。

個人が結局何やりたいのかっていうのは、One JAPANの中にもいろいろあると僕は思うんです。そういうのがわかったら、「それ私と通じる」とか、「うちの会社でこういうことできるよ」とか出てくる。いっぱい失敗するけど、この辺すごい学んだじゃんまたやろうぜみたいな。しつこいですが、失敗しないとイノベーションは起きない。

大川:ビジョンデータベースと失敗データベースとトライデータベースぐらいは作りたいね。

濱松:YES!!

ビジネススクールも、人と人が出会う場に

山本:入山先生の今年の抱負は?

入山先生:・・いろいろありすぎるんですが。一つは、早稲田のビジネススクールMBAコーディネーターになったので、そのプログラムを改革する。今度来てくださるんですよね。

濱松:あ、そうですね!One PanasonicとOne JAPANの話をしに伺います。

入山先生:熱量すごいですよ。One JAPAN並みに。

濱松:前に言っていただきましたね。やっぱりOne JAPANと似てるという・・。

入山先生:超似てる。熱量が高い。ビジネススクールもあり方が変わってくると思っていて。人と人が出会う場になってきてるんですよね、明らかに。

濱松:本当おっしゃる通りですね。

入山先生:教育はあくまで一個の提供できる素材で、それより、業界はさまざまでも志は近い人たちが出会って、集まって。熱量でいろいろ語って、それこそ暗黙知が動くんです。それを求めてみんな来るようになってきている。年齢層は若干One JAPANより高いんですけど。だからさっき言ったおじさんはここにいると思うんですよ。

濱松:ビジネススクールの人たちの方が僕らのことをわかってくれたりとか。

入山先生:うん。絶対わかってくれるよ。

濱松:ですよね。親和性が高いからこそ、本当に何か一緒にやっていきたいですね。またいろいろご相談させてください。今日も本当に素晴らしいお話を聞かせてくださり、ありがとうございました!!

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